02. 『マンボウ』はなぜ漂う? 海の“ゆるキャラ”の正体と生態をわかりやすく解説
海の魚といえば俊敏に泳ぐカツオや、力強く光るブリを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、そのどれとも違う、不思議な存在感を放つ魚がいます。
巨大なのにどこか無防備で、海の中をふわりと漂うだけで人の心を掴んでしまう
――マンボウです。
体長3メートルを超えることもある大きな身体なのに、動きは驚くほど控えめ。もしキャラクターに例えるなら、「繊細な巨人」や「おっとりした魔法使い」がぴったりでしょう。
マンボウの旅は、いつも“ふらり”と始まります。
深海から浮かび上がり、海面の太陽に体を預けるように日光浴をする姿は、世界最大級の“光合成しない植物”のようでもあります。
横倒しで浮かんでいる姿を漁師が見つけて心配することもありますが、近づくと「見てたの?」と言わんばかりに目を開け、また静かに潜っていく。
その仕草の一つひとつに、マンボウらしさがあります。
▪️実は水面から深海まで移動する行動派
のんびりした雰囲気の一方で、意外にも冒険家気質なところもあります。
大好物のクラゲを追いかけて海の深い場所まで潜り、1日に1000メートル以上の深度差を移動することもあるほどです。
柔らかい獲物しか食べられない小さな口が、その生活スタイルを決めているのかもしれません。
▪️とにかくすぐ死ぬ!?
ただしその身体は驚くほど繊細で、急な水温変化や寄生虫で弱ってしまうこともあります。
“すぐ死ぬ魚”とネタにされがちですが、それは極端にデリケートな体質ゆえ。
大きな身体のなかにガラス細工のような弱さを抱えている
――ここにもまた、マンボウという生き物の儚く愛しい魅力があります。
▪️縁起のいい魚として
西日本の海、特に黒潮の影響を受ける地域では春から初夏にかけてマンボウが姿を見せることがあります。
潮を追って現れ、いつの間にか去っていく漂泊者のような存在。
地域によってはマンボウが漂着すると「福が来た」と喜ばれることもあり、
その白く大きな姿は古くから海の恵みを象徴する縁起の良い生き物として扱われてきました。
▪️コラーゲンがたっぷり
食用としてはあまり一般的ではないものの、
地域によっては身・皮・肝などが食文化として残っており、
特にぷるぷるとした皮はコラーゲン豊富で独特の旨味があります。
▪️終わりに__急がなくてもいい生き方
マンボウは謎の多い魚でもあります。
どこまで旅をするのか、どう生きているのか、まだ分からないことが多く、研究者泣かせの存在と言われます。
それでも、海にふわりと浮かぶその姿を見ると、多くの人がなぜか安心してしまう。
「急がなくてもいい」「自分の pace で生きていい」
――そんなメッセージを静かに届けてくれる魚なのです。